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情報の海の漂流者

web上をさまよいつつ気になったことをつぶやいています。

一万年の進化爆発

歴史

従来の学説では人類の進化は過去一万年間に緩慢になった、あるいは停止したという考えられていたが、現在の人類の進化は人の誕生以後60万年間の平均よりも約100倍速く進んでいる、ということを分子生物学や遺伝歴史学を用いて説明している。
銃・病原菌・鉄(amazon)10万年の世界経済史(amazon)と同系統の本だろう。


目次

  1. 概観――世の中で一般に信じられていること
  2. ネアンデルタール人の血
  3. 農耕の開始による大きな変化
  4. 農業のもたらしたもの
  5. 遺伝子の流れ
  6. 拡散
  7. 中世の進化――アシュケナージ系ユダヤ人の知能の高さはどこから来ているか?

読書メモ

  • 社会科学では約五万年前にアフリカから各地に拡散したときに人類の進化は止まった、とされていた。
    • 人間の進化が停止しているならば人間の体はどのような場所でも同じなはず
    • また人間の精神はどのような場所でも同じなはず(人類の精神の斉一性)
    • しかし実際には差異が見られるため、従来の説が間違いであることに疑いの余地はない
概観――世の中で一般に信じられていること
  • 一般的には進化的変化は進行が遅く、著しい変化が起こるにはつねに何百万年もかかるという印象をもたれているが、自然選択は急速に進む。
    • 例えば犬は1万5000年前に狼から家畜化されたが、犬種同士の見た目やサイズの違いは非常に大きい(チワワとグレートデン)
    • 氷河期が終わり海面が上昇したため出来た島、例えばシチリア島では大型捕食者がいなくなり、体が大きいことの利点がなくなり、小さいゾウが有利になった。するとゾウの背中までの高さは5000年間で4メートルから1メートルまで小さくなった。

などなど短期間で急激に変化が進んだ例が紹介されている。

ネアンデルタール人の血
  • 旧石器時代に爆発的な技術革新が起きた。これを文化の「ビックバン」と呼ぶ。
    • 例えば、芸術の誕生や飛び道具による安全な狩猟等
    • 著者はこの時期の劇的な変化には多数の遺伝子が関与していて、異常に早い遺伝的変化を引き起こした何らかのメカニズムが働いていたと考えている
    • 新しい有用な遺伝子をもっとも早く獲得する方法は遺伝子移入(別の種の対立遺伝子を取り込む)である


ちなみにネアンデルタール人との混血については最近、それを裏付ける証拠が発見されたと報道された。


約3万年前に絶滅した旧人「ネアンデルタール人」のゲノム(全遺伝情報)を骨の化石から解読したところ、現生人類とわずかに混血していたと推定されるとの研究結果をドイツのマックス・プランク進化人類学研究所や米バイオ企業などの国際チームが7日付の米科学誌サイエンスに発表した。
(中略)

旧人と現生人類、混血か ゲノム比較で推定 - 47NEWS(よんななニュース)

農耕の開始による大きな変化
  • 農業がはじまると、面積あたりのカロリー生産量が、最終に比べて10〜100倍に高まり、人口は増加する。
    • 人口が増えると望ましい突然変異が頻繁に起こるようになる。
    • 集団の規模が大きくなると、変移が広がるのに必要な時間も増えるのではないかと思うが、有利な対立遺伝子の頻度は指数関数的に増大するので、一万人の集団に広まる時間の2倍の時間で一億人の集団に広まるとのこと。
  • 農耕民は、狩猟採集民とは異なった食物を食べた。
    • 初期の農耕民はこの食物の変化に対応できず様々な病気にかかった。
    • 新しい食事に対応できる遺伝子の変異体を持つ人の子供は生き延びる確率が高くなり、そうした変移は広がった
農業のもたらしたもの

農業による変化がもたらしたもの

  • 感染症
    • 動物と暮らす事により流行した感染症。発疹チフスや腺ペスト等
    • 集団内の個体数や密度が増加したことにより発生する感染症。麻疹等
      • ウィルスが生き延びるためには常にまだ免疫を持たない人がいなくてはならない。近くに住んでいる人が少なすぎたり、集団が小さすぎると、感染先がなくなりウイルスは死に絶える。
    • 農耕民は集団の規模が大きいため、感染症による選択圧を受け、感染症に対する遺伝的防御を進化させた。
      • マラリアから体を守る鎌状赤血球ヘモグロビン等


感染症を経験しなかった地域と、経験した地域で予防機構に差異が生じるということは、ジャレド・ダイアモンド銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎(amazon)等も参照のこと

遺伝子の流れ

遺伝的変移が、他の地域へ広がっていった具体例。Y染色体やミトコンドリアDNAの解析データに基づいている
交易、植民地化、征服など

拡散
  • ヨーロッパ人のアメリカへの拡散。ユーラシアでは、感染症に対抗する為に免疫力を高める方向で自然選択が行われた。逆に感染症が少ないアメリカ大陸では、免疫力が弱く自己免疫疾患にかかりにくい方が有利であった可能性があるという。
    • コロンブス以降旧世界と新世界が接触を続けるようになると、ユーラシアの感染症が大量にアメリカにもたらされ、感染症に弱いアフリカ先住民は大きなダメージを受けた
      • アメリカ先住民の人口は感染症により数世紀で90%減少したという推定もあるらしい。
  • 逆のパターン。ヨーロッパ人はマラリアをはじめとするアフリカの病気に対する遺伝的防御が弱く、侵入が非常に難しかったという
  • インド=ヨーロッパ語族は乳酸耐性を持ったことにより、人類の話し言葉の半数を決定するほど拡散したという仮説
    • 酪農は食肉用に牛を飼うよりも面積あたり5倍のカロリーを生産できる。
    • 乳酸耐性を持つ人は牛乳から効率的に栄養を摂取することが出来る
    • インド=ヨーロッパ語族乳酸耐性を持つ人が多く、同じ土地からより多くの戦士を育てることが可能。
      • 周辺の集団に対して優位に立てる。
中世の進化
  • アシュケナージ系ユダヤ人は知能指数が他のどの民族集団より高い。
    • ヨーロッパの平均は100だが、アシュケナージ系ユダヤ人の平均は112〜115
      • そのかわり、ある種の遺伝病の有病率が他のヨーロッパ人の100倍も高い
    • これは、中世以降、ホワイトカラーの職業で成功するための強い自然選択が行われていたからではないかという仮説