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情報の海の漂流者

web上をさまよいつつ気になったことをつぶやいています。

読書メモ:アメリカのゲイたち

丁寧にインタビューを行い、まとめた本。
僕は年間400〜500冊のペースで本を読んでいるのだが、ここ半年読んだ本の中で一番すげーなと思ったのがこの本。
1998年の本なので内容は少し古くなっているが、読んでおく価値はあるだろう。
どうすごいのかというと、性的マイノリティの話に興味がある人が「はじめに読む一冊」として非常に優れている。
挫折するほど難しくなく、専門用語はちゃんと解説してあり、感情移入しやすい形式で書かれており、一つ一つの話が短い。

専門用語には分かりやすい解説がついていること

例:p1-2
ゲイということばがいつ同性愛者を表すようになったのか、その起源には諸説があるが、一九二〇年代に『バラエティ』誌が使用したのが最初とされる。当時の同性愛の男性は「女性的」なタイプが目立ったせいか、身なりや言動の派手派手しさを、ゲイと評し、定着したとの説。(ゲイにはもともと、楽しそうな、陽気な、派手な、という意味がある)もある。当初ゲイについて回った侮蔑的な意味合いは、このことばが広範に使用されるにしたがい薄れていった。ゲイは本書では主に同性愛の男性の意味で使用したが、最近は政治的正当性(ポリティカリー・コレクトネス)の影響でレズビアンだけでなく、バイセクシャル、性転換者(の男女)も含めるのが「正しい」定義である。

こんな感じで語感の違いや意味合いの変遷までサポートして解説されている。
前提知識を必要としないのだ。
本文の邪魔にならない文量で抑えられているのもポイント。

感情移入しやすいテーマ

p121によると、サンフランシスコでは、アメリカの団魂の世代に当たるベビー・ブーマーのゲイ男性の六割がエイズで死亡したという統計があるそうだ。
またアメリカの十代の自殺者の3割がゲイである、というような話も出ていた。
多くの若者が自らの命を断つほどの苦悩や差別、親しい友人や愛する人がバタバタ死んでいくという、壮絶な体験、そういうものをまとめた本なのだ。
社会問題を学ぶ場合、「退屈な勉強」との戦いに負け途中で投げ出してしまうことも多いのだが、この本についてはその心配はなさそうだ。

正確な知識の話

女装した男性同性愛者(ドラッグ・クィーン)の話がある。
解説部を引用しよう。

ゲイの中で最もカラフルで目立ち、からかいの対象になりやすいのが女装した男性同性愛者、ドラッグ・クィーン(略してドラッグともいう)だろう。ニューヨークでの取材中、貧しい黒人層からも軽蔑の対象になっているとよく聞いた。しかしゲイの初めての公権力に対する反撃として歴史に残るニューヨーク、グリニッジ・ビレッジの「ストーン・ウォール事件」の主役は、ドラッグ・クィーンだった。なぜなら彼らはゲイのトーテムポールの最下層で、これ以上落ちることはないからだという。この指摘は視差に飛んでいるドラッグ・クィーンはしたたかだ。蔑まれてもめげない。逆に失うものが何も無いものの強みで、ショーにチャリティーに積極的に参加している。
p53

こういう知識を持っていると、たとえば石原都知事の同性愛発言が違って見えてくるはずだ。


差別でいうわけではないが、同性愛の男性が女装して、婦人用化粧品のコマーシャルに出てくるような社会は、キリスト教社会でもイスラム教社会でもあり得ない。日本だけがあってもいいという考え方はできない。


NEWSポストセブン|同性愛の男が化粧品CM出演など世界でありえぬと石原都知事

つまり、マイノリティの中のマイノリティ、被差別階級であるドラッグ・クィーンが、マジョリティである異性愛者の女性の「なりたい自分の象徴」である化粧品CMに出演することの意義をどう評価するのかという話になってくる。
石原氏の同性愛問題についてはCM業界の「ホモ・エロティック」というブームの存在なども反証になるだろう。
p74ページからだ。
興味が有る方は本文参照のこと。

性交同意の話

ゲイのSMについて興味深い話もあった
SMプレイは時に不測の事態が起きる。
それに対処するために、プレイの中止を求める暗号をあらかじめ決めておくという話が興味深かった。
つまり、「いやよいやよも好きのうちというが本当に嫌な時はどうすればいいのか」という問題について事前に話し合っているわけだ。
このルールについては性教育の教科書に載せても良いレベルだと思っている。
この辺をちゃんと決めているカップルは、はたしてどれ位いるのだろう?



それ以外にも考えさせられる問題が色々書かれている。
興味がある人は読んでみたらいかがだろうか?